【海外の動き】ベトナムが2050年を見据えた2021~30年までの国家グリーン成長戦略

事務局より海外の脱炭素・環境に関する動向をお届けします。

●ベトナムが2050年を見据えた2021~30年までの国家グリーン成長戦略

10月1日、「2050年を見据えた2021年から2030年までの国家グリーン成長戦略承認に関する首相決定第1658/QĐ-TTg号」が発布された。これは国家のグリーン成長の方針を示すもので、前回の2012年発布の「2011年から2020年までの国家グリーン成長戦略」(1393/QĐ-TTg号)に替わるものとなる。今回は特に、経済の繁栄、環境における持続可能性、社会における平等を目指し、温暖化とCO2排出削減というグリーンな経済の実現が強調された。今後、この方針に基づき各省庁から詳細ガイドラインが発行される。

戦略方針としては、エネルギーの高効率化と製造業・物流業・商業・工業におけるエネルギー浪費の削減、農業開発におけるクリーン技術の導入等による付加価値向上、環境負荷のある産業を段階的に制限するためのグリーンなベンチャー産業成長の促進、スマートで持続可能でレジリエンス、経済効果が保証された都市形成の促進、環境・自然と調和した暮らしのある農村構築、資源循環を実現する廃棄物と大気質の一元管理モデルの研究開発、グリーン消費の促進、水資源・土壌の有効活用による生物作用性管理の強化などを進めていく方針が示されている。

具体的目標は、温室効果ガス排出削減量を2014年比で2030年15%減、2050年30%減とし、a.温室効果ガス排出強度の削減、b.各産業のグリーン化、c.暮らしのグリーン化と持続可能な消費促進、d.平等・インクルージョン・レジリエンスの原則に基づくグリーン化プロセスの項目毎に分け、それぞれ具体的な数値目標を示している。各目標の一部を下表に示す。

  • 目標(抜粋)

項目

2030年

2050年

温室効果ガス排出削減量(2014年比)

-15%

-30%

a)温室効果ガス排出強度の削減

GDPあたりの一次エネルギー平均消費量

-1.0~1.5%

10年毎に1%/年削減

b)各産業のグリーン化

供給エネルギーに占める再生可能エネルギー比率

15~20%

25~30%

都市の生活廃棄物の基準に沿った収集処理率

95%

・100%

・有機ごみの埋め立てを最低限に抑える

c)くらしのグリーン化と持続可能な消費促進

収集後の都市生活廃棄物の処理方法のうち、埋め立てが占める割合

10%

 

都市排水処理率

・第2級都市[1]以上:50%超

・その他の都市:20%

・全ての都市に一律に基準に従った排水システムを完成させ、100%洪水撲滅、100%排水処理の実現

公共交通機関利用率の向上

・特別都市:20%以上

・第1級都市:5%以上

・特別都市:40%以上

・第1級都市:15%以上

クリーン燃料バスの増加

・特別都市:15%

・第1級都市:10%

・特別都市:100%

・第1級都市:40%以上

d)平等・インクルージョン・レジリエンスの原則に基づくグリーン化プロセス

人間開発指数(HDI)

・0.75以上

・100%の自治体で環境・大気質管理計画実施

・人口70%以上が保健省基準に従った衛生的な水を利用できる

・0.8以上

・人口90%以上が保健省基準に従った衛生的な水を利用できる

(日本テピア株式会社)

[1] ベトナムの都市は地理的位置・人口・経済規模、中央直轄市か否か、省庁所在地か否か等の要素で「特別都市」~「第5級都市」に分類される。(2016年国会決議第1210/2016/UBTVQH13号)